冬期オリンピックでは、選手の皆様から沢山の感動をいただいたと感じた方も多いと思います。選手を支える技術の強化では、優秀なコーチと仕組が重要です。
今回は、プロジェクトマネジメントツールの「redmine」をスポーツコーチングに応用し、選手の練習動画を保存、検索、再生する方法について整理してみました。
スポーツコーチやマネージャの皆様のご参考になれば幸いです。

スポーツコーチが必要とする、選手情報とは?

スポーツのコーチが選手の情報を管理するとき、少なくとも次の3つは意識するでしょう。
(1) 現在の選手の状況、過去の状況
(2) これから選手はどう成長するのか?
(3) これから選手はどうあるべきか?

最近は、携帯電話、アクションカメラ、カムコーダーといた動画撮影機器が豊富にあります。
そこでコーチは、現場で記録を取ることで映像を保管できます。
通常は、その場で見せたりしますが、選手が多くなってきたり、記録が重なってくると、ファイルサーバでも管理が大変になります。

また、選手が多い場合は、A選手の動画はB選手に見せたくなかったりプライバシーの問題もでてきます。
そこで、単なるファイルサーバではなくもう少し高度な仕様が必要になります。
そこで、オープンソースのプロジェクト管理ソフトウェア「redmine」を活用して、選手の記録映像を保管する実験をやってみました。

◯プロジェクト管理ソフトがコーチに貢献できること。

プロジェクト管理ソフトで管理することは、次のことです。redmineなら次のことができます。

選手の映像、写真、試合の記録
選手のスケジュール
選手の練習メニュー、実施の記録

先生のお手本映像、写真の記録
チームの映像(グループ管理)
相手チームの映像(競技分析用)

アカウント管理(選手ごと)
グループでの情報の共有(チームごと、パートごと)
動画が保管できること
メッセージ(電子メール)の送信。

◯redmine ってなに?

今回はプロジェクト管理ソフト「redmine」というものを使ってみましたが、知らない方のためにざっくりと説明すると、

・Webベースのプロジェクト管理ソフトウェアである。
・オープンソースで配布されているため、無償で利用できる。
・ソフトウェア開発の現場で主に採用されているが、いろんな現場で利用されつつある。

http://redmine.jp/

◯redmineサーバを建てて見る。

(1)準備
用意するものは、CentOS 6が動作するLinuxマシンがあれば十分です。

<ハードウェア>
Amulet POWERSTEP CUBE
https://www.amulet.co.jp/products/custompc/ps-cube.html
CPU: Core i5 2.8GHz 4Core/8GB DDR3/1TB

<ソフトウェア>
OS: CentOS 6.5
ソフトウェア:
プロジェクト管理: redmine 2.4.3
Webサーバ: apache
DBサーバ: mysql
smtpサーバ: postfix
ネームサーバ: bind

(2)インストール

ハードウェアは、CentOS 6.xがインストールできる機材ならなんでも構いませんが、動画データを保管することを考えると、なるべく大容量のほうがいいと思います。

OSのインストールは、以下のページの第二章が詳しいのでそちらを参考にして下さい。

ユーザとLinuxをつなぐ、Linuxの基礎学習支援サイト コンテンツ目次
https://ssl.amulet.co.jp/cat-user-linux/index

「redmine」のインストールは、redmine.jpのサイトよりリンクでたどった「Redmine 2.4をCentOS 6.4にインストールする手順」というページがあり、その通りに進めたらうまく動きました。
http://blog.redmine.jp/articles/2_4/installation_centos/

ただ、Linuxの基本的な知識が必要です。執筆時点(2014/03/02)では、rubyのバージョンが上がっており、最新版を入れて動作させています。

LAN内の端末からアクセスしたり、外部に公開するには、更にネットワークの知識や設定が必要です。詳しいことはお近くのLinuxエンジニアの力を借りて下さい。

(3)Webブラウザからアクセスする。

無事Webブラウザからアクセスすることができました。

今回は、sports.hq.amulet.co.jp というドメインを社内に設定してそこからアクセスします。
(アミュレット本店内と社内からは観ることができますが、外部からはアクセスできません)

◯実際に使ってみよう

(1)コーチと選手のアカウントを作成する。
チームの構成は、システム管理者1名、コーチ2名、選手4名であると仮定します。
ユーザ登録の例としてはこんな感じです。

(2)「プロジェクト」を作成する。
プロジェクトとは、目標を達成するための期間の限られた活動を指します。コーチにとっては選手を強くさせることが第一ですので、まずそれぞれの選手の活動をプロジェクトと定義します。

(3)記録を書く
「redmine」では、ブラウザ上で文書のやりとりができます。
例えば、コーチ1が選手1・花子の練習メニューを書いていますが、それをコーチ1、コーチ2、選手1・花子の3名で共有することができます。
他の選手は観ることができませんので、選手のプライバシーを守った指導が実現できます。

(4)動画を記録する。
「redmine」では、普通のファイルも保管できます。ということは、選手のとった動画ファイルも記録することができます。
今回は、コーチ1・太郎氏が、選手3・竹次郎氏の試合の動画をファイルでアップしました。





「redmine」では、動画のファイルは初期設定では50MBになっていますが、設定の変更で大きくできますので、100倍の5GBに制限を変更しています。

(5) 記録を見る。
選手は、コーチが書いた記録を見ることができますし、自分でも日記を記録できます。
また、動画もダウンロードして見ることが可能です。


(6)連絡をする。
画面に「チケット」とありますが、実施すべき作業などの一つ一つの作業(タスク)の単位をチケットと呼びます。
作業や状況がアップデートすると、メールがメンバーに届くことになりますので、それを応用して連絡をとりあうことができます。

◯まとめ

ごくかんたんですが、「redmine」をスポーツコーチングに活用する例を紹介させていただきました。先日NHKの日曜討論で、オリンピックに出場している経験を持つ選手の方々が、「コーチがボランティアでやっていて、コーチにリソースが回らない。コーチの能力の向上が、選手の向上になる」という主旨のことを述べておられました。

コーチングの能力をITでサポートはできないか、多少考えてみましたが、Linuxの経験者であれば容易に構築できるシステムでも、一般のスポーツコーチにはかなりハードルが高いかもしれません。これを読んだSEの皆様は是非、お近くのコーチを助けてあげて下さい。もちろん、アミュレットでも応援させていただきます。