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はじめに

アミュレットでは、コンピュータシステムの引っ越しを多数実施しています。個人向けの場合は、以前行っていたデータ移行サービスがありますが、法人向けにはシステム移行をしています。

実際の引っ越しでも計画が必要なように、スマホであれ、パソコンであれ、サーバであれ、ITツールやシステムにも引っ越し計画が必要になります。
ここでは、引っ越し用ヒアリングシートを作ってみました。これであなたも引っ越し大作戦の名隊長になれるかもしれません。

忙しい方向けに、合計で18の質問形式にしてみましたので、1問1分を目安に取り組んで下さい。順番を入れ替えれば、それなりの要件定義書ができ上がります。できたものは、会社やご自身でご活用下さい。

システムの引っ越しには2つの計画があります

「そもそも論」で恐縮ですが、システムを引っ越しするには理由があると思います。まずは、理由を明らかにして、目的を明確にしましょう。目的が決まったら、後半でどう引っ越しするかを決めます。ここでは前半を概念編、後半を実践編とします。
まずは18の質問を先に公開しましょう。

引っ越し計画概念編

  1. あなたのシステムの問題は何か?
  2. あなたは現在、どんな対策を取るつもりか?
  3. 現在のシステムの目的は何か?
  4. これからのユーザは誰か?
  5. これからのユーザは何を価値あるものとみなすか?
  6. これからのシステムの目的は何か?
  7. どのような機能が必要か?
  8. どのような性能が必要か?
  9. どのようなデザインであるべきか?

    引っ越し計画実践編

  10. 事前に何を実験・検証しておくべきか?
  11. 移行手順は何が必要か?
  12. セキュリティ対策(機密性・完全性・可用性)は?
  13. スケジュール(準備、構築、テスト、運用)は?
  14. 予算(準備、構築、テスト、運用)は?
  15. 移行後の影響(サポート)と評価(レビュー)は?
  16. ハードウェアの仕様は?
  17. ソフトウェアの仕様は?
  18. 設置(計画)と構築(体制)は?

それぞれの質問に対する意図と解説

引っ越し計画概念編解説

  1. あなたのシステムの問題は何か?
    そもそも、何か問題や希望があるから「引っ越し」を思い付くのです。その思いをここに自分の言葉で書いて下さい。
  2. あなたは現在、どんな対策をとるつもりか?
    問題に対して、どんな対策をとるか、複数案でもいいので思い付くものを考えてみて下さい。
  3. 現在のシステムの目的は何か?
    現在のシステムの目的を書いて下さい。
  4. これからのユーザは誰か?
    現在のユーザ、これから使うユーザ、将来使わなくなるユーザがいるはずです。そのうち、「これからのユーザ」に焦点をあててシステムを考えてみましょう。
  5. これからのユーザは何を価値あるものとみなすか?
    「これからのユーザ」は、今とは違う価値観を持っているかもしれません。違いを思い出して、書いてみて下さい。
  6. これからのシステムの目的は何か?
    これからのユーザのことを考えると、これからのシステムの目的も違っていくのが当然だと思います。同じだとしたら、何か見逃しているのかもしれません。
  7. どのような機能が必要か?
    これからのシステムに要求される水準、目指す成果を機能の観点から描いて下さい。機能が不足していれば、システムは正常に動作しません。
  8. どのような性能が必要か?
    これからのシステムに要求される水準、目指す成果を性能の観点から描いて下さい。性能が不足していれば、システムは正常に動作しません。性能が過剰では、無駄が生じてしまいます。
  9. どのようなデザインであるべきか?
    ユーザに快適に使ってもらうために、重要なのがデザインです。マンマシンインターフェース、設置場所、ユーザの使われ方等いろんな観点から考えて下さい。

    引っ越し計画実践編解説

  10. 事前に何を実験・検証しておくべきか?
    引っ越しにあたって、すでにわかっている懸念事項はあらかじめ書き出しておきましょう。
  11. 移行手順は何が必要か?
    新システムを作ったけど、引越ができない、というのはパソコンやスマホでもありますよね。見落としがちですが、ポイントを押さえていかないと必ず詰む箇所です。
  12. セキュリティ対策(機密性・完全性・可用性)は?
    システムは、いろんな要因で壊れてしまいます。それを防ぐのがセキュリティ対策になります。「故障しても大丈夫なようにバックアップを取る」といったことも「可用性」というセキュリティ対策の一つです。
  13. スケジュール(準備、構築、テスト、運用)は?
    引っ越しには、いくつもの工程があります。それぞれに時間がかかるので、おおまかなスケジュールを作ってみましょう。最初はあなたの希望的観測から作成し、その後ハードウェア、ソフトウェア、設置計画、構築体制が決まったところで、もう一度見直して下さい。
  14. 予算(準備、構築、テスト、運用)は?
    予算も最初は想像から考えて、その後詳細が決まったところで、もう一度見直して下さい。
  15. 移行後の影響(サポート)と評価(レビュー)は?
    システムの目的が異なる場合、移行前と移行後では見える風景が変わってきます。ユーザはそれに適応できるのか、教育やサポートを考えて下さい。回りに与える影響や配慮も考えます。一定期間超えたら、ユーザ満足度調査を行って、よりよいものに変えて行く計画も必要です。
  16. ハードウェアの仕様は?
    CPU、メモリ、ネットワークインターフェース、ストレージ等の構成がおおまかに書かれていれば問題ありません。クラウドでも同様です。
  17. ソフトウェアの仕様は?
    どのようなソフトウェア、ミドルウェアを組み合わせて、どんな機能を実現するのかを与えます。
  18. 設置(計画)と構築(体制)は?
    どこに設置して、どんなエンジニアがどのくらい動くのかを考えます。

要件定義書を作ってみましょう

質問に対する回答ができあがったら、次に要件定義書を組立ててみましょう。

まずは、引っ越し計画のプロジェクト名を決めます。何でも構いません。
ここでは仮に「プロジェクトA」とします。これまでの質問に「プロジェクトA」の骨組みを対応させると以下のようになります。

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「プロジェクトA」引っ越し計画

Ⅰ.はじめに

6.これからのシステムの目的は何か?

Ⅱ.新システムの目指す機能、性能、デザイン

7.どのような機能が必要か?
8.どのような性能が必要か?
9.どのようなデザインであるべきか?

Ⅲ.新システムの背景

1.あなたのシステムの問題は何か?
2.あなたは現在、どんな対策をとるつもりか?
3.現在のシステムの目的は何か?
4.これからのユーザは誰か?
5.これからのユーザは何を価値あるものとみなすか?

Ⅳ.新システムの事前計画

10.事前に何を実験・検証しておくべきか?
11.移行手順は何が必要か?
12.セキュリティ対策(機密性・完全性・可用性)は?

Ⅴ.新システムの構築計画

16.ハードウェアの仕様は?
17.ソフトウェアの仕様は?
18.設置(計画)と構築(体制)は?

Ⅵ.新システムのスケジュール

13.スケジュール(準備、構築、テスト、運用)は?

Ⅶ.新システムの予算

14.予算(準備、構築、テスト、運用)は?

Ⅷ.導入後サポート

15.移行後の影響(サポート)と評価(レビュー)は?

実際に回答してみました

某A社のFilemaker Pro サーバの移行計画で、実際にやってみました。

シートのテンプレートはこちらです。
IT引っ越しシート概念編(PDF)
IT引っ越しシート実践編(PDF)


アンケート結果はこちらです。
IT引っ越しシート概念編(記入済みサンプル)
IT引っ越しシート実践編(記入済みサンプル)

それに基づく要件定義書は、以下のようになりました。
A社様要件定義書(PDF)

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まだまだ荒削りな要件定義書ですが、骨格はでき上がってきています。

これに基づいて、お近くの専門家や関係者に意見を伺って、洗練させたものを作成します。さらに業者に提案書や見積書を書いてもらって、様々な立場の人(ユーザ)に合わせて提案を検討する流れになります。

関係者が複数の場合、それぞれがこのシートを用い、良いところと吸い上げて意見をまとめることもできるでしょう。

パソコンの引っ越しではやや複雑、サーバの引っ越しではやや簡単ですが、チェックリスト代わりに使っていただけると幸いです。