いざ無くなると困るデータってなんだろう?

情報がデジタルデータで扱えるようになった20世紀以降は、大量のデータが残せるようになった反面、永久に失われてしまったデータも非常に多く、デジタルデータをどうやって残していくかは専門家の間でも議論が尽きません。

日常的にパソコンで仕事をされている方であれば、ほとんどの方がデータのバックアップを取っているとは思います(?)。筆者の場合は、Time MachineというMacに標準付属のアプリケーションを使って、ローカルのHDDにデータバックアップをしています。最近であれば、同期型のクラウドストレージをバックアップがわりに使っている方も多いのではないでしょうか。(厳密には「バックアップ」にはならないのですが…)

バックアップの重要性は、実際にデータをなくした経験のある方であれば実感を伴って理解できると思います。しかし、「バックアップするまでもないか…」と思ってバックアップしていなかったデータが突如消えてしまうこともあり、この場合は思いの外ショックを受けてしまいます(筆者も経験者の一人です)。

そういったいざ無くなると困るデータの代表格が「メールデータ」です。最近ではGmail(Inbox)のようにWebベースでしかもスマホアプリからも利用できる便利なものが多くなってきていますが、通常はいわゆるクライアントPCのメールクライアントソフトウェア(「Microsoft Outlook」、「Thunderbird」、「Becky!」やMacの「Mail」など)の中に保管されているのではないでしょうか。こういった場合、パソコンの買い替えやデータ移行も何かと一苦労です。
※SlackやChatWorkのようなツールを導入している組織では、そもそもメールが廃れているかも知れません…今回そこはひとまず触れないでおくことにします。。

なぜメールのデータがなくなると困るのでしょうか。それはメールのデータが組織にとっての情報資産だからです。

メールは顧客やパートナーとの大切な仕事の記録です。そのため業務の引き継ぎや依頼の際に見返したり、場合によっては裁判等の係争案件で証拠となったりするものです。そのため都合が悪くなったりした場合に、データの保全の観点からも、悪意を持って削除されないようにしておく仕組みがあると良いと思います。

【参考】
メールの証拠能力と裁判
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0612/22/news006.html

そこで今回は、通常のデータバックアップツールを使ったバックアップとは趣が異なる、メールデータのバックアップに焦点を当ててみることにしました。士業や個人事業主の方のお役に立てば幸いです。

メールをアーカイブする

前置きが長くなりましたが、早速メールをアーカイブする方法を見ていきましょう。

「アーカイブ」という言葉を調べてみると、Wikipediaでは以下のようなことが書かれています。あまり知られていませんが、欧米では「アーキビスト」という職業もあったりします。

アーカイブ (archive) とは、重要記録を保存・活用し、未来に伝達することをいう。日本では一般的に書庫や保存記録と訳されることが多いが、元来は公記録保管所、または公文書の保存所、履歴などを意味し、記録を保存しておく場所である

つまり、①いつでも必要な場合に取り出せて、②恒久的に保存できる、この2つがアーカイブするための重要ポイントということです。

ではどうするかと言うと、弊社ではメールアーカイブサーバを作ることをおすすめしています。なぜ必要かは以下のブログを呼んでいただけるとわかりやすいと思います。

システム奮闘記:その69
http://www.geocities.jp/sugachan1973/doc/funto69.html

どのようなものか図示してみましょう。

典型的な組織のネットワーク図を示しました。この中の赤い丸で示しているのが「メールアーカイブサーバ」です。メール送信サーバと隣合わせになっており、メール送信サーバを経由する全てのメール(利用者から見ると全送受信メール)を保管しています。

一般的なメールサーバであれば、PostfixなどのMTAが動作していることが多く、設定パラメータに「全てのメールをメールアーカイブサーバの特定ユーザに転送する(always bcc)」という設定をしておけば、メールのデータを一括管理できます。

メールアーカイブサーバの構成要素

ここからは具体的なメールアーカイブの仕組みを見ていきましょう。まず必要なものは以下の通りです。

ハードウェア

  • LinuxがインストールできるPC(ノートパソコンなどでもOK)
    →Linuxだとそれほどマシンパワーがなくても動かせます。
  • Linuxのインストールメディア(CentOSやUbuntuなど)

ソフトウェア

  • Postfix(メール転送エージェント:MTA)
  • SquirrelMail(Webメールソフトウェア)

SquirrelMailのインストールはこちらのページがわかりやすいと思います。

Webmailシステム構築(SquirrelMail)
https://centossrv.com/squirrelmail.shtml

メールアーカイブサーバにWebメールを導入することのメリット

システム奮闘記」の著者の方も言及していますが、クライアントPCにのみメールデータが保管されている状態では、

  1. クライアントPCのストレージが故障するとメールが消えてしまう
  2. PCの交換や新規購入時のメールデータの移行に手間がかかる

といった課題が残ります。

一方でサーバにデータを集約して必要に応じてWebメールを使って閲覧や取り出しを行う場合には、

  1. メールデータをサーバで一括管理できる
  2. RAIDを組むなどの冗長化対策が取りやすい
  3. データがサーバに集約されているためバックアップが取りやすい
  4. メールを閲覧する端末を選ばない(ブラウザさえ動けばOK)
  5. 日付ごとにソートしたり全文検索機能が使えたりするので過去のメールを探しやすい

といった利点があります。

組織の内部にメールサーバがない場合は?(Google社のG Suiteなど)

Gmail のメールは他のアカウントに自動転送することができます。

Gmail のメールを他のアカウントに自動転送する
https://support.google.com/mail/answer/10957?hl=ja

こういった機能を使えば、社内にメールサーバ無い場合でもメールアーカイブサーバにメールを集約しておくことができます(バックアップ&アーカイブ)

他にもプロバイダのメールアドレスを使っている方も多いかもしれませんが、たいていのプロバイダでは転送機能を提供しているので、設定を行えばメールアーカイブサーバに自動的にデータを溜めていくことができます。筆者もSo-netのメールアドレスを持っていますが、転送設定することができました。

自社およびお客様への導入事例

弊社でもSquirrelMailを導入しており、社外から自社ドメインのメールを読むことができます(メールサーバは自社で管理運用しています)。メールサーバは2台構成で冗長化されているため、容易にデータが紛失しないような仕組みになっています。

その他実際に弊社のお客様でもメールアーカイブサーバを構築して運用している実績があるため、ネットワークやサーバの状況に応じてハードウェアを含めた総合的なご提案ができます。

メールの長期保存といざというときのアクセス性の良さの両立を図りたい場合には、ぜひお気軽にご相談ください。AWSやAzureをはじめとしたパブリッククラウド上でのメールサーバ構築も承ります。